伊藤英人の狩猟本の世界
251.『北海道の食』村元直人著、幻洋社、2000年
今でこそ豊かな食材を想起するが、昭和30(1955)年ごろに米が三食食べられるようになるまで、かなり貧しい食生活が続いていた。漁師は獲った魚をいくらでも食べられたが、数日で飽きてしまうらしく、賄い担当は工夫を強いられた。
野犬は、食用肉や防寒毛皮として利用された。明治末期まで犬肉食が一般的だった、とある。その後も食糧難があって犬食が続いたが、昭和10年ごろから急速に廃れている。その原因を、著者は、増加した入植者の抱く「犬食者に対する差別意識」が関係している、とみている。
80ページにわたる北海道の食物史年表が力作。作物や家畜の導入、ニシン漁の豊凶、シカ情報も載る。1899年は『アイヌ食料分の鹿猟が禁猟となり、アイヌは困窮」。鹿の激減は、人の命にかかわる事態であった。