伊藤英人の狩猟本の世界
260.『野生のごちそう』ジーナ・レイ・ラ・サーヴァ著、棚橋志行訳、亜紀書房、2021年
環境人類学者の著者が、世界各地で食べ歩く野生の食材の記録。
コンゴの狩猟肉(ブッシュミート)は、地元民にとって郷愁を誘うが、手に入れられないほど高価で、密猟からの闇ルートで流通する厄介な食物である。軍(つまり、国)がからみ、賄賂が横行しており、手に負えない。動物が狩りつくされた今、地元民はしかたなく畜肉を食べている。
著者が直面した、この、いかんともしがたい無力感を慰めた人の名前は、コンゴを案内したハンターさんである。ハンターさんはヘラジカを狩る狩猟者でもあり、まぎらわしい。ハンターさんと著者の恋模様は、キスしたとかなんとか、随所にちりばめられている(個人的には恋のゆくえに興味が出なかった)。
グルメな著者がもし日本を訪れたら、どのような「野生のごちそう」を提供できるだろうか。魚料理の寿司、刺身のような、日本が誇る野生肉料理とは何だろうか。