伊藤英人の狩猟本の世界
278.『動物の足跡学入門』熊谷さとし著、技術評論社、2008年
一般向けの読みやすいフィールド本。本書の「足跡学」は進化形態学的に指の数や足のつき方などが説明されており、本格的。フィールドサインから行動を推理していく目的が「観察」であって、狩猟や研究ではないが、プロフェッショナルの知識量である。しかも一人称が「俺」でカッコいい。
挿絵をなんと本人が描いているので、正確さとマンガ化のバランスが完璧。著者が別の人に絵を描いてもらうと、著者や編集者が細かい調整をすることが多いので、とくに一般向けの本をつくるにはとても都合が良い。この本が執筆165冊目というのも納得。
狩猟者が特定の個体を追跡するときに足跡をたどる。この能力は、個体数が多い状況下や、エサで集めて捕獲する猟法ではそれほど必要なく、鍛えづらい。将来、個体の密度が低下したときの捕獲で、真価が問われてくる気がする。獲れるからといって学びを怠ってはならない。本質的な狩猟能力を向上していきたい。