伊藤英人の狩猟本の世界
287.『羆』山本巌著、私製、2006年
恵庭のクマハンターの手記。銃を持つきっかけは、釣りのときの護身用。射撃は海軍で習った。昭和40年代まで、著者の感覚では全道に300〜400頭いたとしている。
行動をよく観察しており、夜の行動をみるためにスルメを仕掛ける。クマはとても慎重にスルメをとる。この著者は観察力と確かな腕で生き残っている気がする。
クマの攻撃は咬みつきと前腕張り手で、強いが、前腕の可動域が狭く、掌を自分に向けて胸を掻く動きはできない。後脚も弱い。(そうは言っても、戦いたくない。)
銃撃については、頭部は硬い骨で弾かれる恐れがあるため狙わない。竹ヤブでは竹で弾が弾かれて逸れるので圧倒的に不利。また、負傷したクマが半狂乱となり向かってくることがある。
アイヌに世話になっている。大物を祀る共用の祭祀所がしばしば荒らされ、心を傷めている。
熱心な若手として、研究者の前田菜穂子さんが登場する。