一般社団法人エゾシカ協会

パート5 回答者/籠田勝基


今号の回答者は……
鳥取大学名誉教授にして獣医学博士の籠田勝基・エゾシカ協会理事です。

人獣共通感染症って何ですか

 人と動物のどちらにも感染して発病させる病気のことです。シカから人に感染の危険性がある病気としては、牛のBSEに良く似たCWDE型肝炎や結核などがありますが、CWDの発生は日本ではありません。このような感染病よりも、むしろシカの解体処理中に起こる各種細菌の汚染による食中毒の危険を防ぐことが重要です。

シカの健康はどうやって見極めるのですか

 野生のシカの健康状態を生きたままで見極めることは大変難しく正確な判断は困難です。そこで捕獲した後の体表の異常(削痩、脱毛、出血など)や、解体して内臓の状態を検査することによって病気の有無と人への安全性を判断します。

参考ページ/エゾシカ衛生処理マニュアル

人への感染を防ぐにはどうすればいいですか

 人に感染する病気がシカの集団の中に存在するかどうかを常にチェックしておくことが理想的ですが、現実的には難しいことです。本道においては、人に感染すると高いリスクを持つと思われるCWDとE型肝炎については、いくつかの処理場ですでに調査が行なわれて、現在まではいずれも陰性であることがわかっています。これらの病気については継続して調査を行う必要があります。そのほかの寄生虫や食中毒の原因菌についても、一部のシカ処理場では検査が行なわれています。また人に感染する病原菌の多くは熱に弱いので十分な加熱調理を行なうことが大事です。

安全なシカ肉を選ぶコツを教えてください

 シカ肉を目で見ただけで安全かどうかを判断することは、ほとんど不可能です。また野生獣のシカは牛や豚のような全頭検査は義務づけられてはいません。そこで、施設の完備した衛生的な処理場で、衛生的な方法で処理されたシカ肉が現在では安全性が高いということになります。このような処理場について、エゾシカ協会では、食中毒菌の検査や、処理の実態を調査したうえで、協会の推奨する処理場として認定する制度をスタートさせました。