伊藤英人の狩猟本の世界
123.『ピダハン』D. L. エヴェレット著、屋代通子訳、みすず書房、2012年
アマゾンのとある狩猟採集民族「ピダハン」の言語が、言語学界に衝撃を与えた、という本。後半は言語学中心だが、前半は著者の体験したピダハンとの生活などが中心で、ピダハンの考え方がよくわかる。その世界観、極度の現実主義には度肝を抜かれる。私には「パパラギ」以来の衝撃であった。
布教という不純な動機で訪れた著者は布教に失敗、逆にピダハンに傾倒しキリスト信仰をやめてしまって家庭崩壊してしまう。
ピダハン流「狩猟者教育」(子育て)は、子を一人前で扱う、ある意味厳しいがまっとうな方法。手をかけすぎる日本人は見習う点が多い。ある日、2歳のピダハンの子が包丁を振り回して遊んでいた。危ない。それを落としたとき、母親は、包丁を拾って子に手渡したのである。危険は痛さで学ぶ。日本のママ友にはなかなかできない、現場重視の教育である。
ピダハンは食料の保存をしない。豊かなアマゾンだからできることであろう。