伊藤英人の狩猟本の世界

124.『アイヌ人物誌』松浦武四郎著、更科源蔵訳、平凡社、2002年


124.『アイヌ人物誌』松浦武四郎著、更科源蔵訳、平凡社、2002年

おもに親孝行のアイヌ人を賞賛する道徳的な小話集。当時の和人の横暴ぶりがものすごい。年頃の女はみな妾にされ、アイヌ人口が激減している。それを告発する著者の存在がせめてもの救い。

そのなかに、勇猛果敢な狩猟者たちのなまなましい描写がある。ヒグマとの戦いで腕を失っても、ヒザで弓をつがえる。これまで私はケガをしないことばかり考えて接近戦をしてきたが、そうでない方法もあることを知った。いやしかし、逃走本能に逆らうほどの勇敢さはマネできない。

弓・わな・毒をはじめとするアイヌ伝統の狩猟法は、鳥獣保護法によってことごとく禁止されているのが現状。