伊藤英人の狩猟本の世界
125.『猟日記』藤村三至著、オリオン社、1964年
銃猟に「とりつかれた」著者の自伝。「クマは襲われる直前まで撃たない」というウワサがもっともらしく書いてあり、その銃撃を外したときの山刀による超接近戦までもていねいに説明されている。
また、いろりで弾数を数えていた化け猫が、隠し弾に倒される話も、地名と実名入りでまじめに紹介される。ほかの話題も現代では「絶対にマネしないでください」と注釈をつけずにいられないし、真偽のほども読者の想像に任せたい。
狩猟に関する定説や教訓がちらほら出現するので、ありがたいし、ためになる。ひょっとしたら各地のベテラン狩猟者の語る武勇伝の元ネタになっている本かもしれない。たとえば銃猟は「一犬二足三銃」だそうで、著者はつくづくそのとおりと感じている。足に車を含めればすべて高価なので、やはり銃猟は上流階級の嗜みか。私はわな派のためどれももっていないし、捕獲後に重点をおいているので、とどめ・解体・なめしに欠かせない「刃物」およびその扱いを上位にあげたい。