伊藤英人の狩猟本の世界

159.『すぐ捕れる“コツ”猟歴40年の技』有泉大著、JPN野生鳥獣研究所、2016年

159.『すぐ捕れる“コツ”猟歴40年の技』有泉大著、JPN野生鳥獣研究所、2016年

山梨県猟友会副会長の有泉大(ありいずみおおい)氏が、40年の実猟で培った罠猟技術を惜しみなく伝授してくれる。本書は流通しておらず、内容・構成ともに手づくり感が強いが、農家の生活を奪う獣害に対する熱い思いが伝わってくる。

ワナに添える葉や枝の置き方にまでこだわったワナかけ(足くくりワナとハコワナ)の実践的説明のほか、弟子インタビュー、シカ肉のソーセージ加工、獣害防除法、著者の講演録、昔の巻き狩りの新聞記事、アマゴの放流などの話題が集められている。狩猟の対象はイノシシ・シカ・ハクビシンが中心。

著者は足くくりワナの止めさし技術を重要視しており、詳しく書かれている。数本のワイヤー(スネア)で動きを制限し、目隠しをしたあと、心臓を刺す。目隠しまでは片桐邦雄氏の方法とほぼ同じ。ただし、大きい獲物には銃を使用する。

狩猟の本を読まない(体で覚えるべき)という著者が執筆に至ったのは、高い狩猟者教育の意識からである。残念なことに、ベテラン狩猟者のなわばり根性、違法ワナ、さらにはワナ盗みの横行を嘆き、半ばあきらめて新人のマナー向上に活路を見出している。最近は補助金不正も露呈し、レベルの低い話で腹立たしい。そうした狩猟者は我が身を振り返り、悪行を戒めてほしい。