伊藤英人の狩猟本の世界
179.『生き物はどのように土にかえるのか』大園享司著、ベレ出版、2018年
分解の生物学。中学生以上対象で、わかりやすい内容と構成。1章が動物の分解、2章が植物の分解。腐敗が進行していくさまざまな段階で、動物・昆虫・菌類がかわるがわる消費していく。これを本書で「遷移」と呼ぶ。私は遷移を植生の用語と思っていたが、なるほど確かにこれも遷移である。
著者は分解について、別の新たな「いのちを生み出すいとなみ」と表現する。死は終わりではなく、そこから広がる豊かな世界の始まりであった。生と同じくらい、死にもいのちがあふれている。
生態学のすばらしいところは、タブーとされがちな「死」がテーマであっても、いのちや循環が感じられることである。
われわれ狩猟者は腐敗を遅らせるなど制御して肉を利用する。しまいにはわれわれ自身も腐る。