伊藤英人の狩猟本の世界

216.『暴力はどこからきたか』山極寿一著、NHK出版、2007年

216.『暴力はどこからきたか』山極寿一著、NHK出版、2007年

ヒト以外の類人猿では、グループ内、グループ間の衝突の回避、和解のルールなどがみられる。これらは人間社会にとって非常に示唆的で、参考にすべきものである。
ある狩猟採集民は、捕獲成功者が威信を集めないように、控えめな態度でキャンプに戻る。

分け与えず、分かち合う。

貨幣経済とコスパ感に縛られたわれわれは、美しい社会を築けるだろうか。狩猟者は、権威なしで敬意を集める、本当の意味の「猟師」になれるだろうか。遵法狩猟やField Expertはもはや最低限といえよう。

人間の狩猟行為と攻撃性が関係しており、武器が改良され、攻撃が同種の人間に向かうようになったとする大きな誤解は、第1章で早々に否定される。「未開人は野蛮で好戦的」「ゴリラは凶暴」もつまらぬ誤解である。狩猟者のイメージも、そろそろよくなってもいい頃である。