伊藤英人の狩猟本の世界

238.『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』山崎収一著、幻冬舎メディアコンサルティング、2020年

238.『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』山崎収一著、幻冬舎メディアコンサルティング、2020年

ネズミ駆除業者による、わなとネズミ行動の独自研究。科学のプロセスに則っていないが、捕獲と捕獲具の改良を重ねた記録をまとめて自費出版したようである。情熱はすごい。

科学的ではないので、結果がどうしても推測の域を出られず、解釈は難しい。「クマネズミは足元が不安定なしかけを嫌う」「ボス(と仮定した大きい個体)がわなに入る前、他のメンバーは遠慮してあまり入らない」などは経験則として価値があるように思う。しかし、これらを裏づける実験結果は示せなかった。推測を多く語られても非効率で、逆に科学の積み重ねの有難さを再認識した。

大きなテーマのひとつである、捕獲具については小さい写真と補足文章しかなく、肝心な細工がよくわからない。この点は出版側の編集業務でなんとかできたはずである。刊行数で稼ぐ自費出版では校正や編集が行き届かないとみられる。少しもったいない。

狩猟でのわなかけもいわば実験であり、仮説と結果についてあれこれ考えるものである。自分なり、自分だけの理論を構築するのもいいが、公表して科学的に検証し、後世に活かすのもいい。