赤坂猛「シカ捕獲認証制度(DCC)への歩み」
  • あかさか・たけし
  • 一般社団法人エゾシカ協会代表理事。

第6回 ヒグマ計画と「専門家」

エゾシカやヒグマなど野生鳥獣の適正な保護管理行政には、それを担う「専門家」が必須である。エゾシカの管理計画では、2008年以降、一貫して「人材育成への取り組み・重要性」を明記し続けていることは第5回で触れた。実は、同様にヒグマの計画においても2000年以来「人材育成」を掲げてきているので、本稿ではその取り組みを紹介する。

北海道ヒグマ保護管理計画

2014年、北海道庁は「北海道ヒグマ保護管理計画」(以下、ヒグマ計画)を策定した。このヒグマ計画は、2000年に全道に先駆けて策定した「渡島半島地域ヒグマ保護管理計画」での各種の取組を踏まえ、全道へと広めたものである。

ヒグマ計画は、4つの章及び資料編等(全40頁)から構成されている。本稿の課題となる「専門家」については、第3章「保護管理の推進/3目標達成のための方策/(4)地域における危機管理体制の構築」に詳述されている。

まず、『体制のめざす姿』として、道内14振興局ごとに「振興局野生鳥獣対策協議会」(以下、振興局協議会)を、その下部には複数の隣接市町村からなる「地域対策協議会」(以下、地域協議会)の設置を想定している。そして、振興局協議会の事務局では、「専門的知識を有する職員」がヒグマ等の管理方針や事業の企画立案を支援・指導するとされている。一方、地域協議会には、「専門対策員」(ヒグマ等の野生鳥獣対策をコーディネートする能力を有する者)や「補助対策員」(ヒグマ等野生鳥獣の捕獲に関する高度な技術等を有する者)を配置する、とされている。

全道14振興局の振興局協議会及び地域協議会にそれぞれ「専門家」を配置する、という明確な目標・内容である。問題は、振興局等に配置する「専門家」を如何にして育成・確保するかである。

専門家の育成等に向けて

ヒグマ計画では、「専門家」の育成に向けた具体的な取り組みを記している。先述した「第3章/3/(4)地域における危機管理体制の構築」の『体制のめざす姿』に続く『体制構築に向けた取組』として、ヒグマ捕獲技術者の育成、狩猟者の増加対策、保護管理を担う人材育成等及び教育機関等との連携について記している。

振興局協議会や地域協議会の運営の成否は、ひとえに上記の「専門家」の確保・育成・配置によっていることはいうまでもない。これらの多様な「専門家」の確保・育成等は、これまでの道庁の「ヒグマ」行政において鋭意取り組まれてきているのであろう。

専門家・地域協議会への期待

ヒグマ計画は、2017年4月より新たな「北海道ヒグマ管理計画」となった(北海道庁ホームページ参照)。ヒグマ計画の策定後、早くも4年目を迎えようとしている。この間の専門家の確保・育成等や地域協議会の開設など諸々の進捗度合いは如何なものであろうか。

なかでも、専門家の育成等については、2000年に全道に先駆けて策定された「渡島半島地域ヒグマ保護管理計画」に明記された重要課題でもあった。本計画の第2章(総合的ヒグマ対策の推進)において、「…被害防除や捕獲、モニタリングなど広く専門的に対応できる人材の育成・確保、さらには、これを擁する新たな仕組みの導入についても検討を進める。」と記されている。「専門家の育成等」については、既に20年余が経過しようとしている重要な道政課題であることを強調しておきたい……。

冒頭にも記したように、エゾシカやヒグマなど野生鳥獣の適正な保護管理行政には、それを担う「専門家」の育成・確保及び配置が必須である。次回は、国による専門家の育成等に関する取り組みを紹介する。


初出 エゾシカ協会ニューズレター第44号(2018年3月)