一般社団法人エゾシカ協会

愛と憎しみの豚

中村安希著、集英社、2013年

中東、イスラエルといった国際紛争を抱える地帯で、ときに宗教的に嫌われる豚を取材。各地で豚は虐げられているが、おいしいということもバレている(本人たちにはいずれにせよ…)。

狩猟の話は出てこないが、この辺りでは(ヤギなどで)一般的な家庭屠畜など、独特の豚文化がみられる。イスラム圏でも豚屠場は存在する。

ウクライナには豚食文化がある。タタール人やモンゴル人に何度も攻め込まれ、羊や牛は略奪されていったが、豚は手をつけられず残ったため豚を育てたという、とても悲しい歴史である(ただし、攻め入った側からの裏付けはとれなかった)。そして、ピロシキはロシア料理と思われている。

豚をペットとしてかわいがっているものの、食べるときに悲しくならないよう、憎き占領独裁者の名前をつける人もいる。日本と比べ、食文化の背景が政治的に重く感じられ、複雑なものであることを知った。日本でも「ソウルフード」という言葉を聞くようになったが、どれだけ食に魂がこもっているか、見直したい。