一般社団法人エゾシカ協会

最後の鉄砲鍛冶

櫻木俊明著、講談社、1977年

鉄砲鍛冶職人本人による自伝。著者は狩猟用ライフルを初めて製造した。文筆の経験もあり読みやすい。

著者は銃を1人でつくれる銃工。「大口径ダブルライフル」を最高傑作と自負している。師匠としてブリヂストンの石橋氏やミヤタサイクルの宮田氏など、びっくりする名前が出てくる。晩年には量産型銃の普及により職人が減りつつあったが、客の目利きの甘さに失望し、つくるのをやめてしまった。本物の銃がなくなるとともに、本物の狙撃手もいなくなった、ということになろうか。

銃には強度と精度が必要であり、扱いやすさも要求される。強度を実現するのは焼入れ術で、失敗は射手の負傷となり、試射は命懸け。精度はもう神の領域である。再現できる達人はいるのだろうか。

ヒグマ猟と、巻末に少し銃猟の記録がある。深夜にテンを撃ったり、モモンガをとったりしているので、今とはルールが違うようだ。大砲のような特注品で鴨を撃ち、一発で80羽落としたらしい。これは想像がつかない。