塚田宏幸 (バルコ札幌)
撮影筆者 |
朝食やお酒のお供として、子供からお年寄りまで幅広い層に人気の加工品、ソーセージ。世界中の食卓で愛されている食材だ。
日本人のイメージでソーセージといえば、ドイツを想像する方も多いのではないだろうか。「ドイツ人の体はビールとソーセージで出来ている!」とまでは言わないが、街ごとに名物ソーセージがあると言っても過言ではない。馴染み深いフランクフルトやウィンナー(これは隣国オーストリアだが)は地域の名前。つまり、フランクフルト風ソーセージ、ウィーン風ソーセージという具合。文献によるとドイツだけで1500種類以上のソーセージがあるという。一体世界にどれくらい種類があるのか想像もつかない。
中には我々を驚かせるようなものがいくつもある。私が各国で味わったソーセージの中から、いくつかご紹介したい。まずは、ドイツ・ミュンヘンの白いソーセージ「ヴァイスヴルスト」。仔牛肉や脂を使い白色の外見を作り出す。ケーシングを外して食べるのが一般的。日本の赤ウィンナーも独特の色だが、この白ソーセージも一度食べると忘れられない。
お次は、血液を加えて作る真っ黒なソーセージ。スペインの「モルシージャ」やフランスの「ブーダンノワール」がある。私は「血のソーセージ」という先入観にとらわれて、食卓でしばらく睨めっこをしたことがあるが、ファンは多い。
フランスには豚の内臓を腸詰した「アンドゥイエット」という“内臓の中の内臓”みたいなソーセージが。同席した方によると「フランスではもうおじいちゃんしか食べない古典料理よ」とのことだが、フランス人の中でも意見が二つに割れる珍味であることは間違いない。なにせ「アンドゥイエット愛好協会」が存在するほどなのだから。
私が最も好きなソーセージは北アフリカの北西部、マグリブ諸国の「メルゲーズ」という羊肉のソーセージ。このあたりはイスラム文化が深く、豚肉を食さない方が多い。代わりに羊肉と牛肉を使ったメルゲーズが一般的だ。唐辛子・ニンニク・クミン・コリアンダーなどで作る唐辛子ペーストがタップリ入った強気の味付け。香辛料の組み合わせによって、モロッコ風になったり、チュニジア風になったりと各地で楽しまれている。羊肉ファンには一度味わってもらいたいソーセージだ。
このように世界には色々なソーセージがある。ロースやモモなど人気部位でなくとも作れるのだから、創意工夫でビジネスチャンスが生まれる可能性もある。そこで北海道ではぜひ、エゾシカソーセージという名物を誕生させたいものである。さまざまな部位を活用することが、自然の恵みに感謝することにもつながるのだから。
エゾシカ協会ニューズレター28号に掲載