塚田宏幸 (バルコ札幌)
秋の終わりから冬にかけては「ジビエの季節」。道外から飛行機に乗ってこちらにジビエ料理を食べに来る熱心なファンがじわじわと増えてきた、と私は実感している。
つい先日は、遠くアメリカからお客様が来店された。
「ハンターなんだ。ホッカイドーのエゾシカが美味いと評判だから、アメリカのシカとどう違うか食べ比べたくって」
エゾシカ料理を目当てに、はるばる北海道に足を運んでくれたのだ。「今度は森の中で野生のエゾシカを見てみたい」とも話していた。
思い出すのは10年ほど前のこと。駆け出しだった私は、とある直売のイベントに出店し、エゾシカ肉の加工品を大量に仕入れて、大赤字を出した。イベント自体にはたくさんのお客さんが集まっていたのに、私の店のエゾシカは試食すら進まなかった。シカ肉は嫌悪されている、とさえ思った。当時、シカに対する一般市民の印象は、動物園もしくは奈良公園のシカ、はたまたぬいぐるみ。食べ物としてはほぼ認知されていなかったように思う。
なので今、エゾシカ料理を出した時に「おぉ」などと反応をもらえたならば、あのころとのギャップに、ついニヤニヤしてしまうのだ。
アメリカからのお客様に続いて、今度は東京から松岡修造さんが来店された。TVでお馴染み、元テニスプレイヤーのあの人である。「くいしん坊!万才」という食べ歩き番組のリポーターとして、まさにエゾシカ料理を取材しに見えたのだ。3月4日にオンエアされたが、番組ホームページから紹介文を抜粋すると──
今回は東京では馴染みのないエゾシカを使った料理をいただくことに。なんと北海道では、毎週第4火曜日は「4(シ)・火(カ)」の日ということで、エゾシカ肉を食べようという試みがなされているんだとか。エゾシカ肉は、栄養学的にも高タンパクかつ低脂肪で、鉄分も多く含まれており、非常に優れた食材なんだそうです。そんなエゾシカを使った料理は、「木の実のソースをあしらったエゾシカのロースト」に始まり、チーズを混ぜてしっとりした衣が特徴の「エゾシカのミラノ風カツレツ」、しめにはアイヌ料理の鍋料理「オハウ」をいただきます。
オハウ。牛肉を使って調理したもの。オリジナルはもちろんユク(エゾシカ肉)で作ります。調理と撮影:筆者
収録の合間に、いろいろおしゃべりさせてもらった。修造さんは「エゾシカは好きな食材で東京でも食べますよ」と話した。「エゾシカの栄養価はアスリートにとっても最適です」と私が言うと、修造さんは「僕はもうアスリートじゃないしなぁ……」などとTVのままの口調で冗談を飛ばし、スタッフを笑わせた。
修造さんがエゾシカ料理を美味しそうに食べてくれる姿に、私はもう、ただひたすらにニヤニヤである。
くいしん坊!万歳
フジテレビ・共同テレビ制作。1974年に放送が開始され、2000年から松岡修造氏がリポーター。5分間のミニ番組。現在は関東圏と山形県でのみ放送され、道内では視聴できない。
エゾシカ協会ニューズレター34号に掲載
BARCOM Sapporo(バルコ札幌)
札幌市中央区北2条西2丁目15 STV北2条ビル1F
月-金12:00-24:00、土16:00-23:00
電話011-211-1954 http://barcom.jp/