青山則靖「料理の理」
エゾシカの万能すじ水煮
エゾシカ肉を美味しく食べるとなると筋や筋膜を取り除くトリミングが不可欠ですが、トリミングしにくいスネ肉やトリミングで出たくず肉も美味しく食べたいですよね?
今回紹介するすじ煮を覚えておくと美味しく食べられて色々アレンジも出来ます。
エゾシカを煮込んで料理する時に気をつけないといけないのは〝アク〟。これをきちんと処理しないと臭みが残ってしまいます。
〝アク〟の原因は大きく2つ、植物性のポリフェノールが原因のものと、タンパク質が原因のものです。エゾシカの場合は後者です。タンパク質は75℃くらいで凝固するので熱湯で入れれば固まるのですが、この方法だと肉も硬くなってしまいます。
そこで水から火にかけて〝アク〟も肉もゆっくりと固める方法をおすすめしております。気をつけないといけないことは、沸騰するまで触らない。途中で混ぜてしまったりすると〝アク〟が肉に戻ってしまいます。そして沸騰したら煮汁はすべて捨てて洗い流します。どんなにきれいに〝アク〟を取っても1度目の煮汁には臭みが残ります。ここはもったいないと思わずに捨てましょう。そしてまた水から火にかけます。2度目は驚くほど〝アク〟が出ませんのでそのまま煮込んでいきます。圧力鍋ですと15分程度、無ければ1~2時間程度で柔らかくなります。
柔らかくなったらお好みで味付け出来ます。和風でもトマト煮でもカレーでもシチューでも。今まで使い難かった部位も無駄なく使えますので、是非お試しください。
イラストと文・青山則靖
一般社団法人エゾシカ協会ニューズレター第42号(2017年3月)から。