青山則靖「料理の理」
ハッシュド・エゾシカ
今回は手軽にできてごちそうになる、ハッシュド・エゾシカを紹介します。
市販でも手に入りやすい切り落とし肉を使いますが、以前紹介したすじ煮や、トリミング時に出た端材、使いにくい小さな部位でもできます。
1つ目のポイントは玉ねぎとお肉に小麦粉をまぶすこと。これでダマになりにくく簡単にソースが作れます。
バターでお肉の色が変わるまで炒めたら、赤ワインを2~3回に分けて入れていきます。そうするとすぐにとろみがついてきますので、よく混ぜながら少しずつトマトジュースを加えるのが2つ目のポイント。これでソースのベースができます。
今回は、小麦粉とバター各1に対して液体分20と考えています。液体分の比率を変えると、ソースのとろみをお好みに調整できます。
市販のデミグラスソースを使えばもっと簡単ですが、牛肉など他の素材の出汁で作られていますので、エゾシカの旨みを存分に味うなら、エゾシカだけで作るこのソースがお勧めです。
そして味付けの要は、塩をきちんと計って入れること。液体分の1%が目安です。トマトケチャップや中濃ソースも加えますが、味の骨格はあくまでも塩。「他の調味料は飾りつけ」と考えてください。胡椒は香りが飛びやすいので、仕上げに振るとよいでしょう。
今回は具材もシンプルに仕上げましたが、きのこ類やじゃがいも、人参など、お好みの食材を入れてもできます。私はごぼうを入れるのが好みで、エゾシカ肉の旨みと赤ワインの香り、トマトの酸味に加え、ごぼうの土の香りがうまく奥行きを出してくれます。
ごはんにかけてハヤシライスとしても美味しいですし、パンを添えて赤ワインのお供にも最適です。
イラストと文・青山則靖
一般社団法人エゾシカ協会ニューズレター第46号(2019年3月)から。