青山則靖「料理の理」
エゾシカ焼肉
今回紹介するのは定番の焼肉。一工夫でさらに美味しくなります。お薦めの部位は、外ももの端、シンタマの周り、ロースの端っこ、肩肉の周りなど。ステーキカットのさいに切りよけた「端材」で、煮込みにするにはもったいないけれど使い方に迷ってしまう、そんなお肉は焼肉でいただきましょう。
1つ目のポイントはカットの方向です。肉の繊維に対して直角に包丁を入れること。繊維に平行に切ると、硬い食感になってしまいます。
2つ目のポイントは、カット後にさらに繊維を切ること。ミートテンダーライザー(筋切り器。ネット通販で手軽に買えます)を使うと簡単です。筋切り器がない場合も、包丁の先端で肉全体をまんべんなく叩いてやると、同じ効果が得られます。筋膜をトリミングしづらい薄い部位も、この一手間をかけると、焼いても縮みにくくなります。
3つ目は、あらかじめ肉を調味液に漬け込んでおくこと。焼いてから「後ダレ」で食べるより、こちらのほうが肉の水分が増して縮みにくく、酒やみりん(糖分)や油の効果でさらに柔らかくなります。
焼き方にもコツがあります。肉の表面に赤い肉汁が浮いてくるまで触らずじっと我慢。裏返してからも触らず、2分ほどかけて焼き上げます。肉汁をたっぷりと蓄えた美味しい焼肉の完成です。
1 エゾシカ肉の繊維の向きと直角に包丁を入れて薄切りにします。
2 まな板の上に並べて筋切り器で全体を切ります。
3 みじん切りにした長ねぎと白いりゴマ、調味料を、肉と一緒に厚手のビニール袋に密封し、よく揉み込みます。
4 冷蔵庫で30分以上寝かせます。
5 片面ずつじっくり、できるだけ触らずに焼き上げます。
材料と分量(試作時)
エゾシカ肉(端材) | 300g程度 |
長ねぎ | 1/2本 |
白いりゴマ | 大さじ1 |
コチュジャン | 大さじ1 |
酒 | 大さじ2 |
みりん | 大さじ2 |
しょうゆ | 大さじ3 |
ごま油 | 大さじ2 |
※分量は試作時のもの。適宜調整ください。
写真と文・青山則靖
一般社団法人エゾシカ協会ニューズレター第53号(2022年10月)から。