青山則靖「料理の理」
エゾシカのミートソース
エゾシカ肉と相性の良い食材は色々ありますが、トマトは特に相性の良い食材だと思います。エゾシカ肉は鉄分が多く含まれていて、そして高タンパク動物性タンパク質の多い食材は旨み成分のイノシン酸が豊富に含まれます。この旨みを一番感じやすいのは挽肉で料理することです。挽肉+トマトの料理といえばミートソースが代表ですね。
ミートソースはトマトと赤ワインがベースになります。トマトに多く含まれている旨み成分のグルタミン酸とエゾシカ肉の旨み成分のイノシン酸が相乗効果で味に深みを与えます。トマトの酸味はエゾシカ肉の鉄分と味わいが同調して味を引き締めて赤ワインのアルコールは臭みを和らげ、お肉の香りを引き出し、タンニンの渋みで味にメリハリを与えます。
美味しく作るポイント
材料を順番に入れてしっかりと炒めること。
油・にんにくで香りを出して、挽肉に完全に火が通ったら、玉ねぎを入れて透き通ったら、トマトを入れてさらに炒めて、赤ワインを入れて煮詰めます。これを一度に入れてしまうと、温度が下がり野菜から蒸気が出て、挽肉の臭みを野菜が吸ってしまい、挽肉のアクはソースに溶けてしまいます。
そして味付けで大切なのは、塩味をきっちりと付けることです。塩が味の骨格となって、ケチャップ・中濃ソースで甘みと酸味とコク、醤油で塩味と旨みの肉付けをするイメージです。
ミートソースは色んなお肉で作ってきましたが、エゾシカ肉が一番旨みが強く出ると思います。
イラストと文・青山則靖
一般社団法人エゾシカ協会ニューズレター第43号(2017年10月)から。